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2006年7月29日 (土)

電力線が通信線と同じという大嘘

「LCLが同じなら電力線は通信線と同じだ」 とか、
「漏洩電界はコモンモード電流からしか生じない」 とか、
そんな甘い言葉をあなたは信じられますかぁ~?
というわけで、今日は、PLC許容値案の大前提となっている大嘘を暴いてみたいと思います。

今回のPLC許容値案が、次の2つのことを前提としていることは、総務省の説明でも明らかです。
1.漏洩電界はコモンモード電流からしか生じない
2.漏洩電界が環境雑音レベル以下なら短波帯の受信に影響を与えない

1の根拠は研究会報告書第5章で、徳田教授とPLC技術者たちの研究?が元になっているようです。2は杉浦教授の想像で、特に根拠は無いようです。

電話線などの通信線も、屋内の電力配線に使われているVVF線も、平行2線式の伝送線路とみなすことができます。理想的な伝送線路のディファレンシャルモード電流からの輻射は無視できます。しかし、それはあくまでも伝送線路からの輻射が無視できるというだけです。伝送線路にダイポールアンテナが接続されていれば、そのダイポールからは極めて効率よく輻射が起こります。その電流は伝送線路のディファレンシャルモードから供給されたものです。高速通信線には分岐がないので、ダイポールアンテナが接続されているような状況はほとんど考える必要はありません。これが、通信線では、コモンモード電流からの輻射だけ考えれば良いという根拠です。

しかし、電力線の場合はどうでしょうか?電力線には多数の分岐があります。分岐には大別してコンセント分岐とスイッチ分岐があります。コンセント分岐は、本線からコンセントへの配線で、コンセントに負荷が接続されていなければ、ただのオープンスタブとみなすことができます。負荷が接続された場合は、負荷次第ですが、次のスイッチ分岐に準じて考えることができます。

スイッチ分岐は、照明負荷とそのON/OFFをする壁スイッチが直列に入った分岐です。この分岐は、本線からの一方の線は照明負荷に直接行き、他方は壁スイッチを経由して照明負荷に行きますので、2つの線の経路が異なり、平衡した線路とみなすことはできません。具体的には2本の線に流れる電流の大きさが異なり、その差がコモンモード電流となって、輻射が起こります。しかし、そのコモンモード電流は本線にも流れるので、コモンモード電流さえ抑えておけば十分というのが、研究会の見解のようです。

報告書第5章には、その根拠として、ある簡単化されたモデルについてのシミュレーション結果も載っています。そのモデルとは、本線にコンセント分岐が1本、スイッチ分岐が1本というものです。

Plc_com_fig51

はい、確かに、このモデルのようにスイッチ分岐が1本だけなら、スイッチ分岐のコモンモード電流=本線のコモンモード電流になります。しかし、皆さんの家にスイッチ分岐はたった1本しかないでしょうか?普通の家だと、玄関や廊下、階段なども含めた部屋の数以上はスイッチ分岐があはずです。

スイッチ分岐が2本以上あれば、1本の時と本質的に異なることが起きます。例えば、2本のスイッチ分岐のコモンモード電流が、本線上ではディファレンシャル電流となる場合があります。まさに、ダイポールアンテナへの平衡給電と同じ状況です。研究会の偉い先生方からは、そんなのは特殊ケースで、理論的には考えられても、現実には有り得ないという

Plc_dipole_sym_feed

声が聞こえてきそうですね。

しかし、スイッチ分岐が複数あれば、本線のディファレンシャル電流の一部が、スイッチ分岐のコモンモード電流に変換されることは理論的には自明です。スイッチ分岐が1本しかなくて、モード変換が起こらないという、研究会のモデルこそ、絶対に有り得ない特殊例なのです。住宅で実際に起こることを知りたければ、最低でもスイッチ分岐は2本必要だったのです。

"Make everything as simple as possible, but NOT SIMPLER", Albert Einstein

もっと、一般的に、複数のスイッチ分岐からの輻射の問題を理論的に考察することはできますが、長くなるので、ヒントだけにします。

1.スイッチ分岐のコモンモード電流は、本線上では1次元の複素数の加算になります。当然、弱め合う部分があるわけで、その弱まった分は本線上ではディファレンシャルモード電流になります。

2.一方、複数のスイッチ分岐のコモンモード電流からの輻射は、3次元空間での複素数の加算になります。ある方向で弱め合っても、別の方向では強め合うことになり、全方位角に渡って、弱め合うということはありません。

PLCのところでいくらコモンモードを抑えて、ディファレンシャルだけにしても、途中でコモンモードに変わる部分があるので、意味がないんです。となると、当然、今回提案されているコモンモード電流のみの規制には何の有効性もありません。やはり、基本に忠実に電界で規制するか、あるいは、どうしても電流でやりたければディファレンシャルモード電流も規制しないといけません。ディファレンシャルモード電流でダイポールが駆動されても、漏洩電界が許容値を超えないようにしないといけないはずです。

もう土曜日になってしまったので、意見提出の締め切りまで2週間、サラリーマンには実質4日しか残ってません。材料集めは今週末が勝負です。あなたもNEC2で電力線アンテナのシミュレーションを行って、ディファレンシャル電流から輻射が起こることを実証する科学的データを提出してみませんか?

2006年7月27日 (木)

電力線アンテナコンテスト開催

研究会報告書の第5章を読んで唖然。論理的に破綻してます。結論が明らかに間違ってます。かなり悪質です。こんなものを根拠に、法令を変えたりしたら、手が後ろに回ります。

その解説を延々してたのに、ちょっとした操作ミスで消えてしまったので、それは金曜日にまた書き直します。

この報告書のモデルには意味がないので、そのシミュレーションがあってるかどうかはどうでもいいです。

それよりも、この研究会でネグってしまったことの方が重要です。それは、電力線のディファレンシャルモード電流からの輻射です。

フリーのアンテナ解析ソフト MMANANEC2 for MMANA を使って、電力線をアンテナとして解析しましょう。

ここに、研究会のモデル「PLC_COM_Fig5-1.maa」 と、電力線で作ったダイポール「PLC_DIPOLE_SYM_FEED.maa」 、それに基本素材のVVF線のモデル「VVF16_30m_Loaded.maa」 のMMANAの入力ファイルを置いときます。こいつらで色々遊びながら、電力線のディファレンシャル電流からの輻射を研究して見てください。自宅の配線もシミュレーションしてみてね。

コンテストの部門は、実環境シミュレーション部門:自宅の電力線をシミュレートする、電力線アンテナ創作部門:高利得・低VSWRでディファレンシャルから給電される電力配線を設計する、基礎研究部門:ディファレンシャル電流からの輻射を解明する、くらいかな。

それから、アンテナに詳しい知り合いとかがいたら、是非、ここに連れてきてね。

2006年7月25日 (火)

高周波技術者の憂鬱

今、高周波技術者の間で、総務省の高速電力線搬送通信に関する研究会報告書がちょっとした話題になっている。ことの発端は、MWE2005の打ち上げを中華街の某所でやった時に、いつものごとく高周波回路・無線技術系のマニアックな話で盛り上がっていたら、最近はアマチュア無線で100万もするトランシーバが売れてるらしいという話や、そのスペックが結構凄くて感動したとかいう話の流れで、そういえば最近アマチュアがPLCのことで騒いでるけど、あれって本当のところどうよって話になったと記憶している。高周波技術者にアマチュア無線経験者が多いのは確かだが、ここに居合わせたのは、自分の技術的興味を満足させるために今の仕事を選んだような連中ばかりなので、さすがに今でも趣味で無線やってますというのはいなかった。じゃあ、なんでPLCでその後もひとしきり盛り上がることになったかっていうと、「これって、もしかして、俺たちがやらされんじゃないの?」っていう不安が頭をよぎったからだ。
 なんでそれが心配かって言うと、まず、我々のセンスからすると電力線に高周波入れちゃ電波出ちゃって駄目でしょっていうのがある。だからあんなもんが許可されるはずないとみんな思ってた。ところが、総務省の研究会が何やら共存案とかいうのを作って、パブリックコメントの募集が始まってるらしいということで、そんな馬鹿な、どうしてそんな馬鹿なことになったのかと、あらゆる可能性をビールと紹興酒の続く限り喧々諤々と議論してはみたが、さっぱり分からなかった。(既に酔いが回っていて、議論も堂々巡りだったという話はあるが。)それで、何で困るかっていう話に戻ると、今は高周波の専門家が少ないってこともあって、我々は結構面白いやりがいのある仕事をさせてもらっているという自覚がある。携帯の仕事は殺人的に忙しいが、仕事の内容としては充実している。それなのに、誰かが勘違いして始めてしまったような仕事の尻拭いをやらされるのは真っ平ごめんだ。とにかく、降りかかってくる火の粉は掃わなければならない。
 それで、酔っ払っちまって結論が出なくて、そのままになっていたんだけど、何か知らない間に、電波監理審議会にかけて、法令を変えるってところまで進んじまったようだ。その意見募集を今やってるみたいで、これが本当の最後の最後で、これを通れば、法律で許可されてしまうようだ。そうなると、PLC部門から赤紙が来ちまうかもしれない。しばらくブランクがあったんで、この間のことはおいおい他のサイトで勉強するとして、まずは最後の意見募集に高周波技術者として、きちんとした意見を提出したいと思う。
 方針としては、研究会→CISPR委員会→情報通信審議会→電波監理審議会と、その内容がほとんどそのままノーチェックで使われている研究会の報告書の内容を洗いなおして、高周波的に間違っているところを追及します。ざっと目を通しただけでも、穴は沢山ありそうですが、時間が無いので、本質的なところに集中したいと思います。一人だと手が回らないかもしれないので、腕に覚えのある人は、是非手伝って下さい。プロ・アマは問いません。とりあえず、間違い探しゲームスタート!時間制限は今週末ということで。

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